トラックのEV化というと、新車への買い換えを思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、長年にわたり現場で活躍してきた中古ディーゼルトラックを廃車にするのではなく、EV車として再生するという選択肢があります。

それが「中古トラックコンバートEVプロジェクト」です。

本記事では、中古トラックをEV化する仕組みや、その背景にある考え方、実際の工程、そしてこの取り組みがもたらす価値について解説します。

未来をつくる、廃車ではない選択肢「中古トラックコンバートEVプロジェクト」の全容を見ていきましょう。

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廃車ではない選択肢「中古トラックコンバートEVプロジェクト」

EVコンバートトラックに搭載するモーター。

中古トラックコンバートEVプロジェクトは、ディーゼルエンジンを搭載した中古トラックを、バッテリーとモーターで駆動するEVトラックへと再生する取り組みです。

トラックの構造や特性を踏まえながら必要な部品を組み替えることで、実用性を保ったままEV化を行います。

このプロジェクトの大きな特徴となるのは「使い捨てない」という考え方です。

中古トラックは、年式や走行距離だけで判断されがちですが、車体やシャシーにはまだ十分な価値が残っているケースも少なくありません。

中古トラックコンバートEVプロジェクトは、物流業界、そして日本の持続可能な未来をつくる、新たな選択肢です。

EVトラックでつくるのは持続可能な未来

中古トラックをEV化する取り組みは、単なる車両の電動化ではありません。

  • 環境負荷を減らす
  • コスト面の負担を減らす
  • 運転者の身体への負担を軽減する
  • 地域・インフラとつながる

これらは、さまざまな側面において、持続可能な未来をつくるプロジェクトです。

環境負荷を減らす

EVトラックは走行時に排気ガスを出さず、騒音も抑えられるため、環境負荷の低減につながります。

とくに住宅地や都市部での配送業務では、排気ガスやエンジン音が課題となる場面も少なくありません。EV化によって、環境への影響を抑えながら業務を行える点は、大きなメリットです。

また、中古トラックをEVとして再生すること自体が、資源の有効活用につながります。

中古トラックの車体を活かして使い続けることで、車両を廃車にして新たに車両を生産する場合と比べて資源の消費や環境負荷を抑えられる点は、本プロジェクトの大きな価値といえます。

コスト面の負担を減らす

EVトラックの導入というと、高額な初期投資を想像する方も多いかもしれません。

しかし、中古トラックをベースにEVへコンバートする方法は、新車EVを購入する場合と比べて、およそ半分のコストで導入できるケースがあります。

さらに、事業用車両の電動化や脱炭素化を目的とした国や自治体の補助制度を活用できる場合があり、条件によって、補助率3分の1、買い換え差額の3分の2、車両価格の4分の1程度が対象などといったケースもあります。

トラック買い換えの負担を軽減しながら、環境へ配慮した車体の導入を進められる点は、事業者にとって大きなメリットだといえるでしょう。

また、電気料金の変動はあるものの、燃料を電力に置き換え、深夜電力による充電を活用するなど運用を工夫することで、ランニングコストの見直しにもつながります。

運転者の身体への負担を軽減する

EVトラックは、環境やコスト面だけでなく、実際に運転する人の負担軽減にもつながります。

トラックドライバーは、日々の業務で長時間ハンドルを握り続ける仕事です。騒音や振動、頻繁な変速による負担は、知らず知らずのうちに体へ影響を与えます。

振動が少なく、変速のないスムーズな走行が可能なため、長時間運転に伴う疲労を抑えやすい点が特徴です。

EV化によって走行時のストレスが軽減されることは、ドライバーの働きやすさの向上にもつながります。

地域・インフラとつながる

移動手段としてだけでなく、エネルギーインフラの一部として活用できる可能性を持っているのも、EVトラックの特徴です。

たとえば、倉庫や事業所で発電した太陽光エネルギーを活用しトラックへ充電することで、エネルギーを効率的に循環させる運用ができます。

また、EVトラックのバッテリーは、災害時やイベント会場などで電力を供給する役割も期待されています。

学校給食や地域配送といった公共性の高い分野での活用も含め、車両が地域と連携しながら機能する未来を描けるのです。

EVトラックは、単に「環境に優しい車」ではなく、地域や社会とつながる存在となりえます。

中古トラックコンバートEVプロジェクトは、車両・エネルギー・地域をひとつの流れとして捉え、持続可能な仕組みを形にする取り組みといえるでしょう。

トラックのプロだから実現できたコンバートEVプロジェクト

既存の部品をおろしているところ。エンジンをはじめミッション、燃料タンク等を外す。

中古トラックをEV化するコンバート事業は、単に新しい技術を取り入れれば実現できるものではありません。

車両の構造や特性を深く理解したうえで、実用性と安全性を両立させる技術力が求められます。

アマギは「トラック」という特殊性の高い車両を扱い続けてきたからこそ、本プロジェクトを実現できました。

トラック整備を熟知した技術基盤

トラックは、乗用車と比べて構造が複雑で、使用環境や積載条件も多岐にわたります。

エンジン、駆動系、フレーム、電装といった各要素が密接に関わり合っているため、構造について一部だけを切り離して考えることはできません。

コンバートEVでは、ディーゼルエンジンを取り外したあとに、モーターや制御ユニット、バッテリーを組み込む必要がありますが、その際にもトラック特有の構造理解が不可欠です。

長年にわたりトラック整備に携わってきた技術基盤を生かし、配線や部品配置、重量バランスなどといった細かな部分まで見据えたうえで組み上げることで、実用車としての性能と信頼性を確保しています。

法規対応まで見据えた体制

コンバートEVトラックは、技術的に完成していても、それだけでは実用車として成立しません。

公道を走行するためには、道路運送車両法や保安基準に基づいた審査をクリアし、正式にEV改造車登録される必要があります。トラックのEVコンバートにおいては、この制度面のハードルが大きな課題です。

実際、アマギだけでは改造申請までの手続きなど、知識と経験には限界があります。そこで、今回EVコンバートのお話をいただいた、ヤマトモビリティ&Mfg.株式会社様と協力提携し、何とか1号車が誕生しました。

EV化を現実的な選択肢とするためには、コンバート技術と制度、両側面への対応が欠かせません。

ヤマトモビリティ&Mfg.株式会社と提携し共同制作した、記念すべきEVコンバートトラック1号車。

密着レポート!EVトラックに生まれ変わるまで

中古トラックコンバートEVプロジェクトでは、ディーゼルトラックを段階的に分解・再構築し、EVトラックへと仕上げていきます。

ここでは、実際の工程に沿って、EVトラックが完成するまでの流れを紹介します。

Step1|荷台(ボディ)とディーゼルエンジンの取り外し

EVコンバートの最初の工程は、荷台(ボディ)の取り外しから始まります。

トラックの場合、エンジンを取り外す作業に入る前に荷台を外す必要があり、これは乗用車のEV化とは異なる特徴的な工程です。荷台は固定用のボルトや配線を一つずつ外し、車体から切り離します。

荷台の取り外し後、エンジンまわりの部品はほとんど撤去する。

その後、ディーゼルエンジン関連の部品を取り外していきます。

後輪へ動力を伝えるデファレンシャルなど、EV化後も使用できる部品は残しつつも、エンジン本体をはじめ、変速機(ミッション)、ラジエーター、燃料タンク、マフラー、配線やホース類など、エンジン駆動に必要な部品はほぼすべて撤去されます。

Step2|EVユニットの組み込み

ディーゼルエンジンを取り外した後、EVトラックとしての核となるユニットを組み込んでいきます。

モーターや制御ユニットを搭載するために、まず専用のブラケットを取り付け、骨組みを構築します。エンジンが載っていたスペースを活用しながら、EVユニットを支える構造を一から組み上げる工程です。

EVユニットの取り付け。配線・ケーブルの取り回しに要注意。

この段階で特に重要になるのが、配線やケーブルの取り回しです。後から部品を付け直すことがないよう、どこに配線を通すかを考えながら慎重に組み付けていきます。

順序を誤ると、後工程で再度分解が必要になるため、図面を確認しながら一つずつ確実に進めます。

また、EVユニットの組み込みも含め、以降の行程で使用するボルトやネジは種類が多いうえ、見分けがつきにくい点は大変な部分です。

作業の前に必要なボルトやネジを揃え、一本ずつ確認しながら締め付け、しっかり締結済みであることを管理しつつ作業を進めます。一本も残らない状態となれば、確実にすべてを取り付け終えたという確認にもなります。

Step3|大容量バッテリーの搭載

EVユニットの組み込みが完了すると、次に大容量バッテリーを搭載します。コンバートEVトラックでは、バッテリーを車体下部に取り付ける構造を採用しています。

車体の中央付近に、たたみ一畳分ほどのサイズのバッテリーを吊り下げる形で設置するのが特徴です。

最後に、重要な部品であるバッテリーを取り付け、完了。

このバッテリーは重量が約300kgあり、取り付け位置や固定方法が厳密に決められています。

そのため、細かな調整を行う工程はほとんどなく、設計どおりに確実に取り付けることが求められます。重量物を扱う工程であるため、安全面にも十分配慮しながら作業が進められます。

Step4|最終チェックと走行テスト

すべての組み付けが完了した後は、最終チェックと走行テストを行います。

EVトラックでは、専用のメーターパネルを使用しており、電源を入れた際に正常に作動するかどうかが重要な確認ポイントです。メーターパネルが問題なく起動することは、電気系統が正しく接続されている目安となります。

その後、敷地内での走行テストを行い、加速や減速、走行時の挙動を確認します。エンジン音がなく、スムーズに加速するEVトラックならではの特性を確かめながら、安全性と実用性の最終確認を行います。

これらの工程を経て、中古ディーゼルトラックはEVトラックとして再び走り出すのです。

未来を動かすトラックをつくる、アマギの仕事

中古トラックコンバートEVプロジェクトは、単にEV車両を生み出すための取り組みではありません。

環境やコスト、運転者の身体といった課題に向き合いながら、日本の物流や地域インフラを支え続けるための選択肢だといえます。

EVトラックとしてつくり変えることで持続可能な環境をつくり、静かでスムーズな走行でトラックを運転する人の負担を軽減し、働く環境をよりよくすることにもつなげていきます。

車両の先にいる人や社会を見据えながら、一台一台と向き合う。その積み重ねで、アマギは未来を動かすトラックを生み出しています。